開発者観察ガイド

From The Joel on Software Translation Project

Jump to: navigation, search

Joel Spolsky / 青木靖 訳
2006年9月7日 木曜


あなたがしかるべき場所に広告を出し、素晴らしいインターンシッププログラムを持ち、採用したくなる人たちを面接することができたとしても、優れたプログラマたちの方であなたの所で働きたいと思わなかったとしたら、彼らが来てくれることもない。だから今回は一種の開発者観察ガイドを提供することにしよう。彼らが求めているものが何なのか、彼らが職場で好むこと、嫌うことが何なのか、そして最高の開発者に選ばれるためには何が必要なのかを見ていこう。


個室

Ggth09.jpg

去年私はイェール大学で行われたコンピュータサイエンスのカンファレンスに参加した。講演者の中に、シリコンバレーでの経験が長く、ベンチャーキャピタルの支援を受けたスタートアップの創業に重要な役割を果たすか何かしたという人がいた。その人がピープルウエアの本を取り出して言った。

「この本を読まなければなりません。これはソフトウェア会社を運営するためのバイブルなのです。ソフトウェア会社をどう運営するかについて書かれた本で、これほど重要なものはありません」

私は彼と同意見だった。ピープルウエアは素晴らしい本だ。この本の中で最も重要で、同時に最も議論の多い点は、プログラマを生産的にさせたかったら、彼らに大きく静かなスペースを、おそらくは個室を与える必要がある、ということだ。著者のデマルコとリスターはこのテーマについて延々と書いている。

講演のあと、私はその講演者の所へ行って聞いてみた。「ピープルウエアについては私も同意見だけど、あなたのスタートアップでは開発者は個室を持っていたの?」

「もちろん持ってなかったよ」と彼は言った。「VCは絶対そんなの認めない」

ウーン。

「しかしこれはピープルウエアの本の中で最も重要な点だと思うんだけど」と私は言った。

「そうだけど、勝ち目はないだろうね。VCにしてみれば、個室なんて彼らの金を無駄遣いしているようにしか見えないんだ」

シリコンバレーには広いオープンスペースにたくさんのプログラマを詰め込むという根強い伝統がある。個室の方がはるかに生産的であるという証拠がたくさんあるにもかかわらず。このことは私がここで繰り返し議論してきたことだ。なかなか理解してはもらえないのだが。プログラマは、それが生産性を下げることになるとしても、社交できることを望んでいる。だから説得するのには骨が折れる。

私はプログラマがこんなことを言うのを聞いたことすらある。「ああ、僕らはキュービクルで仕事してるけど、みんなキュービクルで仕事してるんだ。CEOだってそうなんだ!」

「CEOが? CEOが本当にキュービクルで仕事しているの?」

「ああ、CEO用のキュービクルがある。今はそこの会議室にいるけどね。重要なミーティングのときはいつも・・・」

ウーン・・・。これはシリコンバレーで非常に良く見られる現象で、CEOがみんなと同じキュービクルで仕事していることを派手に演出しているのだが、どういうわけか特別な会議室があって、それが彼専用になっている(「個人的に議論する用件があるときだけだ」と言っているが、その会議室に行ってみると、半分の場合にはCEOが1人でいて、コールハーンの靴を履いた足を会議机にのせてゴルフ仲間と電話している)。

Ggth10.jpg

なんにしても、どうして個室がソフトウェア開発者をより生産的にさせ、周りの騒音をヘッドフォンで遮らなきゃならないことがプログラマの仕事の質を下げるのか、あるいはなぜ開発者に個室を与えるのが実際にはそんなにコストがかかるわけではないのかといったことについて、ここで議論を繰り返えそうとは思わない。それについては十分話してきたと思う。今日は採用と、採用における個室の意味について話すことにしよう。

生産性についてあなたがどう考え、また平等主義的な作業空間についてどう考えていようと、次の2点については議論の余地がないだろう。

  1. 個室の方がステータスが高い
  2. キュービクルやそのほかの共有スペースは落ち着かないものだ

この2つの事実から導かれる結論は、プログラマは個室が提供される仕事の方を選ぶ可能性が高いということだ。特に閉まるドアと、眺めの素晴らしい窓がある場合には。

さて、これが採用をしやすくしてくれるというのに、あなたの力ではどうにもできないというのは残念なことだ。たとえCEOや創業者でさえ、VCに依存している場合には、開発者のために個室を作ることができないかもしれない。多くの会社では、オフィススペースの移転や配置換えは5年か10年ごとにしか行われない。小さなスタートアップには個室の費用がまかなえないかもしれない。だから私の経験からすると、たくさんの言い訳が積み重なって、よほど進んだ会社でもない限り、開発者に個室を与えることは実質的に不可能になる。そして進んだ会社においてさえ、どこに移転し、どこでみんな働くのかという決定は10年ごとにしか行われず、その決定はオフィスマネージャの秘書と大きな建築会社の下級アソシエートからなる委員会によってなされるのだが、彼らはオープンスペースは会社のオープンさを示すという建築学部で習ったおとぎ話を信じており、開発者や開発チームの意見が聞かれることはない。

これは恥ずべき状況であり、私は精一杯戦い続けるつもりだが、当面のところ個室というのは不可能なようだ。Fog Creekではフルタイムのプログラマ全員に個室をどうにかして与えるようにしており、しかも世界で家賃が最も高いニューヨークにおいてそうしているのだが、それがFog Creekで働くことをより楽しいものにしていることに疑問の余地はない。あなた方が反論を続けたいなら、どうぞご自由に。私はこれを競争優位にしておくことにしよう。


作業空間の物質的側面

作業空間の物質的な側面には、何か個室以上のインパクトがある。面接の日にあなたの会社を訪れた候補者が、みんなの働いているところを見回し、彼ら自身そこで働いているところを想像してみる。オフィスが快適で、明るく、近所の環境が良く、すべてが新しくてきれいなら、彼らは想像していて楽しく感じるだろう。オフィスがゴミゴミしていて、カーペットは貧相、壁にはペンキも塗られておらず、ボートを漕いでいるチームのポスターが張ってあって「チームワーク」と大きな字で書かれていたなら、彼らはディルバートを想像することだろう。

Ggth11.jpg

技術的な人間の多くは、オフィスがどんな具合になっているのかについて驚くほど無関心だ。実際、いいオフィス環境の利点がよく分かっている人たちでさえ、自分自身のオフィスの欠点については盲目なものであり、それは慣れきってしまっているからなのだ。

会社を訪れる候補者の気持ちになって、無心になって考えてみるといい。

  • 彼らは会社の立地についてどう思うだろう? バッファローというのは、たとえばオースチンと比べて、どう聞こえるだろう? 彼らは本当にデトロイトに移って来たいと思うだろうか? あなたの会社がバッファローやデトロイトにあるなら、せめて面接を早い時期に済ませてしまうことはできないだろうか?
  • 彼らがオフィスに来たとき、どう感じるだろう? 何を目にするだろう? そこはきれいでエキサイティングな場所だろうか? ヤシの木と泉のある素敵なロビーがあるのか、それとも枯れたトウモロコシの鉢植えと古いニューズウィークが置かれたスラムにある公営の歯医者のように感じられるだろうか?
  • ワークスペースはどんな風に見えるだろう? すべて新しく輝いているだろうか? それとも連続用紙にドットマトリックスプリンタで出した、黄色くなったあの巨大なチームバナナのマークがいまだに貼られているのだろうか? (ドットマトリックスプリンタと連続用紙などというものがあった時代に印刷されたやつだ。)
  • 仕事机はどうだろう? プログラマは複数の液晶ディスプレイを使っているのか、それとも1台のCRTを使っているのか? 椅子はアーロンチェアか、それともステープルズの特価品か?

有名なアーロンチェアについて、ちょっと話させてほしい。ハーマン・ミラー社が作っていて、900ドルくらいする椅子だ。これはオフィス・デポやステープルズの安物の事務椅子より800ドルほど高い。

アーロンチェアは安物の椅子よりはるかに快適だ。適切なサイズのものを買って正しく調整したなら、1日中座っていても居心地悪く感じることはないだろう。背と座る部分はメッシュになっており、風通しがいいので汗をかくこともない。特にランバーサポートのついた新しいモデルでは、エルゴノミクスはまったくすばらしい。

アーロンチェアは安物の椅子より長持ちする。私たちはビジネスを始めて6年になるが、どのアーロンチェアも新品同様だ。2000年に買ったものと、3ヶ月前に買ったものを見分けられるかクイズにしているくらいだ。余裕で10年は持つ。安物の椅子はほんの数ヶ月で壊れ始める。アーロンチェアと同じ期間使おうと思ったら、100ドルの椅子が少なくとも4つはいるだろう。

Ggth12.jpg

だから10年以上使えば、アーロンチェアは500ドル余分にかかるだけだ。1年あたりなら50ドル。つまり1週間1人あたり1ドルということだ。

上等のトイレットペーパーは1ロール1ドルくらいする。プログラマはたぶん1週間に1人1ロールくらいは使うだろう。

だからアーロンチェアにアップグレードするコストは、トイレットペーパーに使っている費用と変わらないのだ。予算会議でトイレットペーパーを持ち出したりしたら、重要な話をしているんだからふざけるなと叱られることだろう。

残念ながらアーロンチェアは、特にスタートアップにおいては贅沢品だという悪評を受けている。ドットコムバブルのときに浪費されたVC資金のシンボルのようになってしまったのだ。これは不当であり、それがどれほど長持ちするかを考えれば、決して高価なものではないからだ。そして1日8時間そこに座っていることを考えれば、ランバーサポートと尾翼飾りのついた最高級モデルでさえ安いものであり、それを買うのは実質的にはもうけになるのだ。


開発者のおもちゃ

同様の論理が開発者のおもちゃについても成り立つ。開発者に対して、最高のコンピュータと、少なくとも2台の大きな(21インチ)液晶ディスプレイ(あるいは1台の30インチディスプレイ)を与え、必要な技術書は何でも自由にAmazon.comで注文させるべきだ。これは明らかに生産性を上げるし、そして私たちの今の議論の上でより重要なことは、それが決定的なリクルートツールになるということだ。多くの会社がプログラマを交換可能な歯車、実質タイピストのように扱っており、「なんでそんな大きなモニタがいるんだ? 15インチCRTで十分だろう! 俺が若い頃なんか・・・」と考えているのであればなおさらだ。


開発者の社会生活

ソフトウェア開発者は普通の人とそんなに違っているわけではない。確かに近頃では開発者が対人能力をまったく欠いたアスペルガー症のギークというステレオタイプで見られることが多いが、しかしそれは単に間違いであり、アスペルガー症のギークでさえ、仕事環境の社会的側面は気にかけるものなのだ。これには以下の問題が含まれる:

  • 組織内でプログラマはどのように扱われているのか?
    Ggth13.jpg

    エースか、それともタイピストか? 会社のマネジメントは似非エンジニアか、それとも元プログラマなのか? 開発者がカンファレンスに行くとき、彼らはファーストクラスを使っているのか? (それが無駄遣いに見えようとも私は気にしない。スターはファーストクラスで行くものだ。それに慣れることだ。) 面接のために飛行機に乗ってやってきたとき、リムジンが彼らを空港まで拾いに来るのか、それともどうにかして自分で会社までたどり着かなければならないのか? 他の条件が同じなら、開発者は自分をスターのように扱ってくれる会社を好む。カリカリした元セールマンのCEOが、プリマデベロッパーたちがリストパッドや大きなモニタや快適な椅子なんかを求めていることを理解できず、「何様のつもりなんだ?」と思っているようなら、その会社は態度を改める必要がある。もし優れた開発者に敬意を示さないなら、彼らを手に入れることはできない。

  • 同僚はどんな人たちか?

    面接の日にプログラマが大きな注意を払うのは、そこでどんな人に会うかということだ。彼らはいい人だろうか? 彼らは頭がいいだろうか? 私はベル研究所のスピンオフであるBellcoreでサマーインターンをしたことがあるが、会う人会う人がみんな同じことを言っていた。「Bellcoreで働くのが素晴らしいのは、そこにいる人たちなんだ」

    それはそれとして、どうにもできない不機嫌な開発者がいるなら、せめて面接のスケジュールからはずし、上機嫌で社交的な船室係タイプの人がいるなら、間違いなくその人が面接に加わるようにすべきだ。候補者が家に帰ってどこで働くか心を決めようというときに、会った人がみんな辛気くさかったとしたら、その会社についてあまりいい印象は残っていないだろう。

    ところでFog Creekの元々の採用ルールはMicrosoftから持ってきたもので、「頭が良く、物事を成し遂げる」ということだった。私たちが会社を始める前でさえ、3番目のルールを付け加えなきゃいけないと思っていた。「嫌なやつでないこと」。思い返してみると、Microsoftでは嫌なやつでないということは仕事を得るための条件ではなかった。互いに良くすることがいかに重要かとみんなリップサービスはしていたと思うが、嫌なやつだからというだけの理由で誰かが採用されなかった例はなく、ことに上位のマネジメントには嫌なやつであることが前提条件であるように思えた。これはビジネスの観点からは害にならないように見えても、採用の観点からは害になる。嫌なやつがのさばっている会社で働きたいと思う人がいるだろうか?

  • 独立性と自律性
    Ggth14.jpg

    私がJunoを辞めたのは1999年で、Fog Creek Softwareをはじめる前のことだ。人事部は標準的な退職者面接を行い、私は罠にはまってこの会社のマネジメントの悪いところをすっかり人事部の人間に話すことになった。それが自分にとってはいかなる益にもならず、害があるだけだというのは分かっていたが、ともかく話すことになり、そして私が主に文句を言ったのは、Junoのヒットアンドラン・スタイルのマネジメントについてだった。ほとんどの場合、マネージャは人々を放っておいて仕事をさせておく。しかしときどき何かのごく微細な点について口出しをし、正確に彼らが言う通りのやり方でやるように要求して、言い分を聞こうともしない。そしてまた別な人の仕事をマイクロマネジメントしに行って、ばかげた結果になるのを見られるほど長くとどまらない。たとえば、私が特にわずらわしく思ったのは、私のマネージャから上、CEOまでの全員が揃って、Junoのサインアップ時に日付を入力させる方法が正確にどうでなければならないか、2、3日に渡って口を挟んできたときだ。彼らはUIデザイナとしての訓練は受けていなかったし、この件では私の方が正しかった理由について理解できるほど長く私と話すこともなかった。しかしどちらが正しいかは問題でなかったのだ。マネジメントがこの問題に立ち戻ることはなく、私の議論を聞くために時間を取ることもないからだ。

    基本的に、あなたが頭のいい人を雇おうとするなら、あなたは彼らがその能力を仕事に適用できるようにしてやる必要がある。マネージャはアドバイスできるし、自由にそうしてかまわないが、その「アドバイス」が命令と受け取られないよう、細心の注意を払う必要がある。それはどんなテクニカルな問題においても、マネジメントは現場の作業者ほどには問題を理解していないからで、優れた人を雇っている場合には特にそうなのだ。

    開発者は自らの能力によって雇われ、専門家として遇され、その専門領域に関しては決断させてもらえることを望んでいる。

  • 政治がないこと
    Ggth15.jpg

    政治は2人より多くの人が集まる所にはどこにでもある。それは自然なものなのだ。私が「政治がないこと」で意味しているのは、「機能不全の政治がない」ということだ。プログラマは研ぎ澄まされた公正の感覚を持っている。プログラムというのは動くか動かないかのいずれかだ。バグが存在するかどうかについて議論するのは意味がなく、テストをすればわかることだ。プログラミングの世界は非常に公正で、非常に厳格に秩序立てられている。そもそもプログラミングの世界に入ってくる人がそうする理由は、多くの場合、公正で、秩序があって、厳格に能力主義で、議論は単純に正しい方が勝つような場所にいたいと思うからなのだ。

    そしてそれはプログラマを引き付けようとするときに作らなければならない環境でもある。プログラマが「政治」について文句を言うとき、それが正確に意味していることは、技術面よりも個人的な考えが重視されているということだ。開発者があるプログラミング言語を、それが現在の作業のために最適なものだからではなく、ボスの好みだからという理由で使うように言われることほど、彼らを憤慨させることはない。人々が厳格に能力によって昇進するのでなく、コネによって昇進することほど、彼らを怒らせることはない。組織で彼らより上にいるか、より強いコネを持った人間が要求しているために、技術的に劣った方法でやらなければならないということほど、彼らをムカつかせることはない。

    政治によってなら負けていただろうときに、技術的な優位さによって議論に勝つことほど満足を与えるものはない。私がMicrosoftで働き始めたとき、MacroManという見当違いな大きなプロジェクトが進められていて、それはグラフィカルなマクロ言語を作ろうとするものだった。そのプログラミング言語は本物のプログラマにはイライラさせられるもので、そのグラフィカルな特性によってループや条件分岐を記述する方法がなかったからだ。それが非プログラマの助けになることもなく、それは彼らはアルゴリズムという考え方に慣れておらず、MacroManをそもそものはじめから理解しないためだ。私がMacroManについて文句を言うと、私のボスは「あの列車を線路からはずすことはできないよ。あきらめるんだな」と言った。しかし私がずっと議論を続けていると——私は大学を出たばかりで、Microsoftの誰よりもコネを持っていなかった——やがてみんな私の議論の中身に耳を傾けるようになり、そしてMacroManプロジェクトは中止されることになったのだ。私が誰かなんて問題ではなかった。問題なのは私が正しいかどうかということだった。そういう非政治的な組織がプログラマには歓迎されるのだ。

結論としては、組織の社会力学に注意を払うことが健全で快適な働き場所を作る上で重要であり、それがプログラマを引き付け、引きとめることになるということだ。


何の仕事をしているのか?

開発者を引き付ける一番いい方法は、彼らに興味深いことをさせることだ。これは変えるのがもっとも難しいことかもしれない。あなたの会社が砂利業界向けのソフトウェアを作っているなら、それがあなたのビジネスなのであり、開発者を引き付けようとしてクールなWebスタートアップであるフリをするわけにもいかないだろう。

開発者が仕事内容に望むもう1つのことは、感謝祭にイルマおばさんに説明できるくらいにシンプル、ないしは有名だということだ。イルマおばさんは核物理学者だけど、砂利業界におけるRubyプログラミングについて知っているわけではない。

最後に、多くの開発者は、自分の働く会社の社会的な価値を気にかける。ソーシャルネットワーキング会社やブログ会社は人々が交流するのを助け、何かを汚染したりはしない(ように見える)ため、人気がある。一方軍需産業や倫理的に問題のある粉飾決算しているような会社はずっと人気がない。

残念ながら、平均的な採用マネージャがこのことに関してできることが何かあるのかわからない。製品のラインアップに何か「クール」なものを付け加えようと試みることはできたとしても、あまりうまくはいかないだろう。しかし企業がこの領域でやっていることがいくつかある。

  • 成績上位の新入社員にプロジェクトを選ばせる

    Oracleは長年MAP(Multiple Alternatives Program)と呼ばれるプログラムをやっていた。これはそれぞれのクラスで最高と思われる学生に提示されるもので、そのアイデアは、彼らがOracleに来て最初の1週間か2週間いろいろと見てまわって、ポストに空きのあるグループを訪れ、自分が働きたいと思うグループを選べるのだ。

    これはいいアイデアだと思う。たぶんOracleにいた人なら、それがうまくいっていたのか知っているだろう。

  • 必要もなくクールな新技術を使う

    ニューヨークの大きな投資銀行は、プログラマにはしんどい場所として知られている。作業条件はひどいもので、長時間騒がしい環境のもと、暴君のボスの下で働かされるプログラマは3級市民だ。そこでは金融商品を売買しているテストステロン溢れるサルが特権階級であり、30,000,000ドルのボーナスをもらい、食べられるだけのチーズバーガーを食べている(たまたま近くにいたプログラマがよく買いに行かされる)。これはステレオタイプだが、最高の開発者を引き止めておきたいなら、投資銀行には2つの方法がある。山のように金を払うこと、そしてプログラマには彼らが学びたいと思う新しいホットなプログラミング言語を使って基本的に何でも自由に書き直すことを認めるということだ。トレーディングアプリケーションを丸ごとLispで書き直したいって? 勝手にしろ。ただしチーズバーガーは買ってこいよ。

    プログラミング言語に何を使うかぜんぜん気にかけていないプログラマもいるが、ほとんどのプログラマはエキサイティングな新しいテクノロジーを使って仕事するチャンスが得られことを望んでいる。今日ではそれはPythonとRuby on Railsだ。3年前はC#で、その前はJavaだった。

    私は別に仕事に最高のツールを使うなと言っているわけではないし、2年ごとに「本日のホットな言語」で書き直したりするなと言っているわけでもない。もし開発者が新しい言語やフレームワークやテクノロジーに触れられる方法を見つけられたなら、彼らは楽しくなるということだ。別にビジネスの中心的なアプリケーションを書き直さなくとも、内部的に使われるツールや、あまりクリティカルでない新しいアプリケーションを、学習プロジェクトとして、エキサイティングな新しい言語で書かせることができないか考えてみよう。


会社と一体化できるか?

多くのプログラマはツケを払うだけのために仕事を探しているわけではない。「デイ・ジョブ」は望んではいない。自分の仕事に意味を見出したいのだ。会社と一体化したいのだ。特に若いプログラマはイデオロギーのある会社に引かれるものだ。オープンソースやフリーソフト運動(この2つは同じものではない)と何らかのつながりを持つ会社は多いが、それは理想主義的な開発者には魅力的なものに映る。別な会社は社会的な目標を掲げたり、社会に貢献しているように受け取られる製品を作ったりしている。

リクルーターとしてのあなたの仕事は、自分の会社の理想主義的な側面を見出し、候補者が間違いなくそれに目を止めるようにすることだ。

中にはイデオロギー的な運動を自ら作り出そうとする会社もある。シカゴ地域のスタートアップである37signalsはシンプルさというアイデアを自社の基準としている。Backpackのようにシンプルで使いやすいアプリケーション。Ruby on Railsのようにシンプルで使いやすいプログラミングフレームワーク。

Ggth16.jpg

37signalsにとって、シンプルさというのは一種の「イズム」であり、実質的には国際的な政治運動なのだ。シンプルさは単なるシンプルさではない。そうではなく、それは夏や、美しい音楽や、平和や、公正さや、幸福や、花を髪に飾ったかわいい女の子を意味するのだ。Railsの作者であるデビッド・ハイネマイヤ・ハンソンによれば、彼らのストーリーは「美しく、幸福で、モチベーションを与えるものだ。自分の仕事やツールにプライドと喜びを感じられる。このストーリーは単なるファッドではなく、トレンドなんだ。このストーリーによって、情熱や熱狂というのが、言い訳せずに使える開発者の公認のボキャブラリーになる。自分のやっていることが本当に好きだということを照れずに言うことができるんだ」。単なるWebプログラミングフレームワークを、「美と幸福とモチベーション」にまで引き上げるのはちょっと傲慢に見えるかもしれないが、しかしこれはとてもアピールし、確かに彼らの会社を差別化している。Ruby on Railsの幸福な物語を広めることによって、彼らはRuby on Railsの職を探す開発者が出てくるようにしているのだ。

しかし37signalsはこの一体化マネジメントキャンペーンにおいてはまだ新参にすぎず、Appleには及ばない。Appleは1984年のスーパーボールでの1つの広告によって、彼らの地位を今日に至るまで固めたのだ。独裁に対するカウンターカルチャーとしての自由の力、圧制に対する自由、白黒に対するカラー、洗脳されたスーツを着た男に対する明るい赤色のショートパンツをはいたきれいな女性。これが示すのは、皮肉なことにオーウェル的なものだ。巨大な企業が公のイメージを、意味すら持たないような仕方で操作しており(たとえば、彼らはコンピュータ会社だが、それが独裁に反対することと何の関係があるんだ?)、そして一体感を持てる文化を作り出すのに成功している。世界中のコンピュータを買う人々は、単にコンピュータを買っているのではなく、その運動に加わっているように感じる。あなたがiPodを買うとき、もちろんあなたは英国の植民地主義に抵抗するガンジーをサポートしているのだ。MacBookの1台1台が、独裁主義と飢えに対する反対の意思表明となるのだ。

ともかくだ。ちょっと深呼吸しよう…。今回の話の本当のポイントは、あなたの会社が何を表明しており、それがどう受け取られ、あるいは受け取られうるか考える必要があるということだ。企業ブランドの扱いというのは、マーケティング同様、リクルートにおいても重要なのだ。


プログラマが気にしないもの

彼らはお金を気にかけない。あなたが別なことでひどいことをしない限りは。以前耳にしたことのなかった給与についての不満を耳にするようになったなら、それは通常彼らが仕事を本当は好きでないことの徴なのだ。潜在的な新入社員が法外なサラリーに対する要求を捨てないなら、こんな風に考える人を扱うことになる。「クソッたれな仕事に行かなければならないのなら、せめて十分に払ってもらわないと」

これは低い給料でやっていくことはできないという意味ではない。人々は公正さを気にかけており、同じ仕事をしている別な人が別な給料をもらっていると知ると怒るのだ。あるいは職場のみんなが、そのほかの点ではまったく同等な道の向こう側にある会社よりも20%給料が低かったと分かると、お金は突如として大きな問題となる。あなたは他所に負けない給料を払う必要がある。しかしそれをすべて考慮した上でも、プログラマはどこで働くか決めようとするとき、基本的に公正なものでさえあれば、給料というのは驚くほど低い優先度しかなく、他な問題(プログラマが15インチのモニタを使っているとか、セールスの連中が年中怒鳴りつけているとか、業務内容がアザラシの赤ちゃんから核兵器を製造することにかかわっているとか)を克服するためのツールとして高い給料を提示するというのは驚くほどに効果が低い。


履歴書の順序づけ

このシリーズの次回では、最初に面接する人がうまくいく見込みを高くする履歴書の順序づけのしかたについて話そう。


(オリジナル: Field Guide to Developers)

戻る

Personal tools