FogBugz 4.0への道: パート4

From The Joel on Software Translation Project

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Joel Spolsky / 青木靖 訳
2005年3月31日 木曜


商用ソフトウェア製品を作る上で、実際にコードを書くことに使われるエネルギーは、割合としてはばかみたいに小さい。私の見積もりでは、Fog Creekのチームが費やす100カロリーの内訳は次のような感じになる:

25カロリーがカスタマサービスに費やされる。
55カロリーがデバッグ、ベータテスト、それに細かい調整に費やされる。
8カロリーが、Fog CreekのWebサイトを含む、マーケティングの作業に費やされる。
5カロリーが大学生の履歴書を読み、面接をするのに費やされる。
5カロリーがオンラインデモやオンラインショップといった、製品でないコードのために費やされる。
顧客へと届けられる新しいコードを実際に書くのに使われるのは、残りのたった2カロリーにすぎない。

これはプログラマのはじめたソフトウェア会社の多くが失敗する理由を説明しているように思う。プログラマというのは新しいコードを書くことにかけては本当に優れており、デバッグもこなすかもしれないが、しかし誰も彼らにマーケティングやカスタマサービスについては教えてくれなかったし、グラフィックデザインをやらせたらおおよそひどいものだろう。

顧客はソフトウェア製品を買う前に、それが彼らのニーズに合った製品か判断するためにあらゆることを評価する。

  • 彼らはWebサイトの出来を評価する。
  • 彼らはディスカッショングループで、買った人が本当にその製品を使っているかとか、問題を抱えているユーザが迅速に解決を得られているか見る。
  • 書籍のような、サードパーティによるサポート基盤が存在するかを見る。
  • 会社の評判が良いか評価する。
  • Webを検索して、肯定的に語られているかを見る。
  • その会社がどれくらい長く存続しているか、収益を上げ成功しているかを見て、製品サポートが今後も長く継続されか判断する。
  • あ、それから、それでもなお時間が残っているようなら、彼らは実際にその製品がちゃんと機能するか確かめてみるかもしれない

何百万ドルもするが実際には機能しない高値で役立たずのシェルフウェアを人々が買うのはこのためだ。彼らはそれをインストールしさえすれば、批判やそのほかの気まぐれな怒りの声からきっと守られるだろうと正当化するのだ。

それはそれとして、最終製品版が完成して出荷するばかりとなった後も、私たちは製品の体験を完璧なものとするため、FogBugzをローンチする前にやっておきたいことがたくさんあった。FogBugz 4.0の大きな課題を挙げると、

  1. ユーザインタフェースにプロ品質のグラフィックデザインを施す
  2. 製品の全機能を含んだオンラインデモ
  3. カウチポテト向けのオンライン製品紹介ムービー
  4. マーケティングのためのすばらしいWebサイト
  5. 本屋で売られるFogBugzに関する本が少なくとも1冊はあること
  6. 物理的な製品をCD-ROMの形で提供すること


グラフィックデザイン

人の感情はごくごく表面的なことに囚われやすい。特に人は製品を評価する際に見た目の美しさをばかげているくらい過大評価する。それがiPodや、ついでに言うとキアヌ・リーブスがすごく成功している理由のひとつだ。あなたの製品が機能的であっても美しくないなら、美しいがさほど機能的でない製品に対し、すごく、すごく、すごく、すごく、すごく、すごく、すごく、すごく、すごく、すごく大きなハンディキャップを負うことになる。

このことの重要性から、私は時間を使ってウェブデザイナの作品を見て回った。そうして、当時はまだできたばかりだったCSS Zen Gardenを偶然に見つけた。これはバンクーバーをベースにしているグラフィックデザイナのデイブ・シェイが、CSSが醜い四角張ったデザインばかりではないことを証明してやろうと作ったものだ。そのころはまだZen Gardenにはほんの少ししかデザインがなく、その多くはデイブ自身が作ったものだったが、それは目を見張るような素晴らしい出来だった(私が特に好きなのはこれだ)。

それで私たちはデイブに頼んでFogBugzのデザインを直してもらうことにした。

修正前:

FogBugz3.PNG

修正後:

FogBugz4.PNG

ああ、プログラマの読者たちは「え? 何が違うの?」と思っていることだろう。分かるよ。私も何が違うのか分からない。だけど新しいユーザインタフェースのルックアンドフィールは、5%くらい「ハイクオリティ」に感じられる(それが何を意味するにせよ)。これはまったくあいまいでぼんやりしたものではあるが、前のはみんな猫のパジャマみたいだと言っていたのだ。だから私は満足している。


オンラインデモ

オンラインデモは雄弁なものではあるが、何百何千というFogButzのインスタンスを1つのディレクトリでホストできるようにするのには多くの手間がかかった。

特に私たちが恐れていたのは、誰かがFogBugzを宣伝してくれ、結果として数百、数千という人たちが同時にトライアルアカウントをセットアップし、負荷が一度に貧弱なサーバに押し寄せ、結果的にサーバが過負荷で遅くなっているのをFogBugzが遅いのだとトライアルユーザに思われる可能性があるということだ。だから私たちはトライアルサインアップ処理を修正してスロットルを付け、高負荷のときは新しいトライアルアカウントの作成を遅らせるようにした。このため、ときどき潜在顧客がソフトウェアを試すのを数時間待たされることになるかもしれないが、全員がまずい体験をするよりはいい。


オンラインムービー

私が賞賛してやまない製品に、ミシガン州オケモスにあるTechSmith社が作っているCamtasia Studioがある。これを使うと、ソフトウェアだけでコンピュータの画面を「録画」することができ、さらに編集し、ナレーションをつけ、Webで公開できるコンパクトなFlashムービーにすることができる。これは素晴らしいソフトウェアだ。やりたかった通りのことができ、最初からうまくいき、必要にはならないが素晴らしいマニュアルがついている。

私はFogBugz 4.0の紹介ムービーを作るのにCamtasia Studioを使った。このムービー作成プロジェクトにはほぼ1日かかった。やっているうちにコツをいろいろ覚えたので、もう1つ別なムービーを作ることになったら、2時間くらいでやれると思う。たとえば最初に録画した時は、音がひどかった。私たちのオフィスはニューヨークシティにあり、外の通りの騒音が私たちのいる18階にも入ってくるのだ。普段は気にならないものでも、何か録画している時にはバックグランドでくぐもったサイレンの音が聞こえるのはびっくりするくらいプロらしくなく感じられる。 さらに悪いことに、オフィスの床が全部ハードウッド製で、天井に防音タイルが張られていないため、ムービーの音は川の近くのうち捨てられた大きな倉庫の中でロリポップキャンデーを持ってパトカーが来るのを待っているような感じになってしまった。

それで私はFog Creekにあった敷物やクッションを私の部屋にかき集めた。床に敷かれていた大きな敷物やソファの大きなクッションで壁という壁を覆ったら、音のクオリティはずっと良くなった。私のオフィスは壁に緩衝材が入っていて快適ではあったが、それでも静寂にするには十分ではないのだと分かった。防音の部屋があるといいかもしれない。次のオフィススペースでは、個室に厚いカーペットを敷こうかと考えている。木の床みたいにかっこ良くはないが。それからAviva Stanoffに頼んで、壁につけて遮音性を高めるアーティスティックなクッションを作ってもらうことを真剣に考えている。


Webサイト

ああ、これは最後の最後にいろんなものを集めてきて作った。見た目のいいFogBugzの顧客を何人か見つけて体験談を書いてもらい、素材集のつまらない写真を本物の人間の写真に置き換えた。それからドミトリがバイオリン職人たちの古い素敵な写真を見つけてきた。私は時間をかけてスクリーンショットを使った製品ツアーを作った。多くの人は新しい製品について学ぶ時、最初にスクリーンショットを見に行くからだ。


FogBugzの本

人によって学び方は違うものだ。私の場合すぐに製品自体を使ってみたいと思うけど、授業で使い方を教えてもらうのを好む人もいるし、本を読んで学ぶのを好む人もいる。その製品についての解説書が本屋に並ぶようになるまでは開発ツールを使おうと思わないと誰かが言っているのを聞いたことがある。本物の出版社から出た本物の本があると、製品は本物らしく感じられるのだ。

マイク・ガンダロイの有名な本であるCoder to Developerに私はとても感銘を受けていた。この本には一人前のソフトウェア開発者がコード書き以外にしなければならないあらゆることについて書かれている。それにマイクはFogBugzをversion 1.0の時から使ってくれていたので、彼にFogBugzの本を書いてくれるよう説得し、その本がApressから出版されたのだ。

私がこのマイクの本を気に入っているのは、それが元々詳細に記述されているオンラインドキュメントを単に焼き直したものではなく、ダイアログに入力する個々のステップを無駄に並べたりしていないことだ。そうする代りに、マイクの本はFogBugzを使って効果的にソフトウェアプロジェクトを管理する方法にフォーカスしており、役に立つ材料をたくさん提供している。私はこの本がすごく気に入って、1000部注文してFogBugzと一緒に売ることにしたくらいだ。だいたい20%くらいのFogBugzの顧客がこの本を1、2冊買っている。それからこれは大口の見込み客に渡す説明資料としてもいい。

(あなたが私のようなマイク・ガンダロイのファンであれば、彼がプログラミング技術に関するニュース源としてLarkwareのサイトを再開したのを喜んでいることだろう。)


FogBugzのCD-ROM

ソフトウェア販売の利点のひとつは物理的な製品がないということなのだが、私は古いタイプの人間なので、ソフトウェアをオンラインで買うときには、物理的なディスクのつくオプションがあれば通常そちらを選んでいる。そうすれば棚に入れておける物理的なものが手に入り、ソフトウェアを再インストールする必要があるときにすぐ見つけられる。なぜかはわからないが、物理的な製品のオプションがあると、ソフトウェアがよりリアルなものに感じられ、お金を払うに値するもののように感じられる。なぜそうなるのかは私には大きな謎なのだが、文化人類学者にとってはきっと驚くことでもないのだろうと思う。

私たちはすでに物理的な製品——例の本——を売ることに決めていたので、どのみち物理的な製品を出荷できる設備を整える必要があった。これには在庫と、郵便料金別納証印刷機と、UPSのアカウントといったものが必要になる。だからCD-ROMを商品に追加しても別に害はなかろうと判断した。

FogBugzのCD-ROMの製造はすべてFog Creekで行われている。CD-ROMレコーダーとインクジェットプリンタの組み合わせで人の介在なしにCD-ROMを焼き、ラベルを印刷することができるようになっている。それをCD-ROMのケースよりは幾分見栄えのするDVDケースに詰めている。これまでのところ、週に2、3回くらい、物理的なメディアに10ドル余計に払うことにした顧客に発送している。これにやる価値があったか言うのは難しい。たとえ買う人が誰もいなかったとしても、パッケージに入ったリアルな製品があることでFogBugzはより「リアル」に見えるようになるのだと考えようとしてみたが、それは私が古いタイプというだけなのかもしれない。

明日はいよいよ結果について話すことにしよう!


(オリジナル: The Road to FogBugz 4.0: Part IV)

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