「Eric Sink on the Business of Software」への序文

From The Joel on Software Translation Project

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Joel Spolsky / 青木靖 訳
2006年4月7日 金曜


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Eric Sinkは、Joel on Softwareに、その初期から出入りしていた。彼はSpyglassウェブブラウザの開発者の1人であり、オープンソースのワープロソフトであるAbiWordを作り、そして今はSourceGearでソース管理システムを開発している。

しかし私たちの多くが彼を知っているのは、彼のThe Business of Softwareへの貢献によってだ。このディスカッショングループは、今やソフトウェア起業家たちの集まるハブのようになっている。micor-ISVという言葉を生み出したのはEricだ。彼はこの何年か自分のブログでソフトウェアビジネスについて書いており、それにMSDNに一連の重要なアーティクルを書いている。今度彼は「Eric Sink on the Business of Software」という本格的な「紙」の本を出版した。私は序文を書くように頼まれたのだが、以下に挙げるのがその序文だ。

私が最初に手がけたビジネスについて話したことがあったろうか?

どうにか思い出せるかやってみることにしよう。それは14歳の時だったと思う。ニューメキシコ大学では、TESOLサマーインスティテュートとかいうのをやっていて、私はそこでカウンターの奥に座って、論文誌の記事が必要な人にコピーしてあげる仕事をしていた。

カウンターの横に大きなコーヒーメーカーがあって、ほしい人はカップに25セントを入れれば飲めるようになっていた。私自身はコーヒーは飲まなかったけど、ドーナッツが好きだったので、コーヒーと一緒にドーナッツがあれば素敵だろうなと思った。

歩いていけるほどの近所にはドーナッツを売っているところがなく、車を運転することもできなかった私は、このアルバカーキーにいた当時本当にドーナッツから隔絶されていた。どうにかして、とある大学院生に2ダースばかりドーナッツを買ってきてくれるように頼むと、「ドーナッツ 25c (安い!)」と書いた張り紙を出し、ドーナッツが売れるか見ることにした。

いろんな人が立ち寄り、その小さな張り紙を見ると、カップにお金を入れてドーナッツを取っていくようになった。それで私たちはそれを毎日やるようになった。日々のドーナッツ消費量はどんどん増えていった。インスティテュートのラウンジに用のない人まで寄り道してドーナッツを買っていった。

私はもちろん試食する権利を与えられていたけれど、それが利益に影響することはなかった。ドーナッツのコストは1ダース1ドルくらいのものだった。カップからおつりを漁るのがめんどうで、ドーナッツ1個に1ドル置いていく人さえいた。信じられない!

夏の終わる頃には、毎日大きなトレイで2つ分・・・たぶん100個くらいのドーナッツを売るようになっていた。相当なお金がたまった・・・正確な額は覚えてないが、何百ドルかになっていたと思う。これは1979年のことだ。当時のお金からすると、それだけあれば・・・世界中のドーナッツが買える! もっとも、その頃には私はもうドーナッツはいい加減飽きてしまい、すごく辛いチーズエンチラーダを好むようになっていた。

それで私はそのお金で何をしたか? 何も。言語学部の学部長に全部取り上げられてしまったのだ。彼はインスティテュートのスタッフ全員が参加する大きなパーティをやるのにそのお金は使うべきだと決めた。私は子供過ぎるということで、そのパーティには参加できなかった。

この話の教訓はなにか?

ああ・・・別にない。

しかし新しいビジネスが成長していくのを見るのは、すごくエキサイティングだ。これは健全なビジネスが有機的に成長していくのを見る喜びだ。「有機的」というのは、文字通り「炭素化合物でできた」という意味だ。おっと違った。言おうとしたのは、植物のようにゆっくり成長するということだ。先週は24ドルもうけた。今週は26ドル。来年の今頃は、100ドルもうけているかもしれない。

ビジネスを育てるのが楽しいのは、ガーデニングが楽しいのと同じ理由だ。小さな種を土に埋めて、毎日水をやり、雑草を取り、小さな芽から立派な茂みへと成長するのを見るのは本当に楽しいものだ。それはキクだったり(ラッキーだったね)、あるいはトゲイラクサだったりするわけだが(どれが雑草なのかわからなくなってしまったんだね。でも望みは捨てないで。イラクサからだってお茶を作ることはできる。ただ葉にはさわらないように気をつけて)。

自分のビジネスがあげる利益を見て、あなたは言うことだろう。「すごい、まだ3時なのに、もう9本も売れた! これは最高の1日になりそうだぞ!」 そして次の年には9本なんていうのは冗談に思えるようになる。2年もたつと、イントラネットのレポートにある先週の売り上げ一覧が扱いかねるくらいに大きくなっているのに気付くだろう。

そうしていつか、ソフトウェアが売れるたびにメールで通知する機能を、あなたはオフにすることだろう。これは大きな出来事だ。

そのうちあなたは、雇っているサマーインターンが金曜の朝に持ち込んだドーナッツを売り、お小遣いの足しにしているのに気付くかもしれない。あなたがそのお金を取り上げて彼の招待されないパーティに使うなんてことをしないように望む。


(オリジナル: Foreword to “Eric Sink on the Business of Software)

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