すばらしいデザイン: 何によってすばらしいものとなるのか? (初稿)

From The Joel on Software Translation Project

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Joel Spolsky / 青木靖 訳
2006年1月30日 月曜


「デザイン」についてはどうにか定義できた。このシリーズのタイトルは「すばらしいデザイン」なのだから、「すばらしい」ことの定義についても考えるべきだろう。

どんな製品カテゴリにも、一流の金張りの星のような製品がある。映画スターならブラット・ピット。ロックソングなら、もちろんスイートホーム・アラバマだ。オフィスチェアならハーマン・ミラー・アーロン。MP3プレーヤーなら、間違いなくiPodだ。

これらの製品に共通しているものはなんだろう?

ブラット・ピットは何百万という人々をチケット売り場へと引きよせる。彼はとても見た目が良く、強いカリスマ性があって、演技ができるかどうかは怪しいところだけど、そんなことを誰が気にするだろう?

スイートホーム・アラバマはみんな好きだ。歌ったり口ずさんだりするのは不可能だし(繰り返しのところでハモる必要がある)、メロディはぎこちない。おまけに詞は差別主義者で人種分離主義者のアラバマ州知事ジョージ・ウォレスを擁護している。しかし誰がそんなこと気にする?

アーロンチェアはハイエンドのオフィスチェアの代名詞となった。値段は高いし、巨大なゴキブリみたいに見えるけど、誰がそんなこと気にするだろう?

そして最後にiPodだ。ああ、iPodね。どの競合MP3プレーヤーよりもずっと高い。競合製品より機能が少ない。みんな褒めそやしている小さなiPod nanoは、私の知る限りでは、指で軽く触れただけでひっかき傷がつく唯一の製品だ。輝くミラーになっている背面はエレガントなパッケージから出したとたんに指紋だらけになってしまうし、バッテリがだめになったら捨てて新しいのを買わなきゃならない。でも、誰が気にするだろう?

各カテゴリの一流の製品は、明らかなデザイン上の欠陥にもかかわらず人気となっている。変な話だ。

製品はデザインが良ければ良いほど、そしてユーザのニーズに合っていれば合っているほど、人々から選ばれやすくなる。だから40GBのMP3プレーヤーは、他の条件が同じなら、20GBのMP3プレーヤーよりもよく売れる。使いやすい電話機は、使いにくい電話機よりもよく売れる。他の条件が同じなら。ここまでは変な話ではない

しかしそれは、愛されないZEN MP3プレーヤーを作っているCreativeの歩んでいるような苦難に到る道だ。あらゆる合理的な尺度ではiPodより優れている製品を持ちながら、iPodの支配的なマーケットシェアに近づくことすらできない。安くて、より多くのメモリを積み、より多くのファイルフォーマットをサポートしている。しかしそんなことは問題ではない。iPodのマーケットシェアがおそらく80%代にもなっているのに対し、Creativeのマーケットシェアは依然1桁に留まっている。

良いデザインというのは、そこまでしか連れてきてくれないのだ。デザインのあらゆる側面を完璧にする。使いやすい製品にする。価格と機能、融通性と使いやすさ、重さとバッテリー持続時間といった様々なトレードオフを適切に折り合わせる。そういったことはすべて非常に重要だが、それだけではせいぜいNo2にしかなれない。

これは美人と似ている。背が高く、完全に対称的な顔をし、肌が美しく、愛らしい目をしていて、完璧な白い歯をしているモデル志願者が魅力的には見えない。一方で、大きく不格好な鼻をしていたり、眉毛がなかったり、すごい透き歯だったりする人が、ピープルマガジンから今年最もセクシーな何とかに選ばれる。

どうしたらNo1になれるのだろう? そこに謎がある。ある種のマーケット(グラフィカルオペレーティングシステム、オンラインオークション、それに明らかにMP3プレーヤー)では勝者がすべてを取り、No2やNo3では不十分なのだ。

これが、「すばらしいデザイン」というときに私が指しているものだ。ある種の非常に成功した製品は説明できないような資質を持ち、その欠陥にもかかわらず人々は好きにならずにいられない。そういうものを生み出すのは極端に難しい。ほとんど不可能だ。しかし我慢して聞いてもらえるなら、私はここで何が起っているかについて、ある理論を提示したい。この理論で良い製品をすばらしい製品に変えられるわけではないが、人々がアーロンチェアやジュリア・ロバーツに夢中になるときに何が起こっているかの手がかりにはなると思う。

以下、このアーティクルシリーズ全体のプランについて述べる。まず、良いデザインについて詳しく議論する。現在の技術で、デザインを適切なものにするために知っておくべきことがテーマになる。使いやすさがその基本的な部分であり、ユーザビリティの話に多くの時間を使う。

明らかなことすべてに目が届くようになったら、本当に使いやすくて顧客のニーズを満たすデザインを手に入れることができるだろう。あなたがユーザビリティに対して競合たちよりも多く気配りをするなら、最良のデザインを手にできるかもしれない。しかしそれでもNo1にはなれない。

私は2000年にこんなことを書いた。「ヤコブ・ニールセンの書いたものを読むといつも、ユーザビリティが地上で最も重要なものではないことを彼が理解していないように感じる。確かにユーザビリティは重要だ(このトピックについて自分で本を書いたくらいだ)。しかしユーザビリティはすべての人にとっての最優先事項ではなく、そうあるべきでもない。ニールセン氏がシングルズバーをデザインしたなら、きっと照明は素敵で、店内は清潔であり、大きなメニューは14ポイントのArialフォントで印刷されていて、飲み物で待たされるようなことはないだろう。しかし誰もその店には行かず、独身者たちは汚い酒場でビールをつぎ合っているのだ」

だから最後の方のアーティクルでは、シリーズの最後の3分の1くらいを使って、すばらしいデザインの黒魔術の秘密を覗いてみることにしよう。あなたはそれを自分でやってのけることはできないかもしれない。それには努力だけでなく、本当の才能が必要になるからだ。しかし最後には、ある種のガジェットやソフトウェアや歌や映画スターやオフィスチェアが、単に良いというところから真にすばらしいというところへと飛躍を遂げるとき、いったい何が起きているのか、いくらかでも理解できるようになっていればと思う。

ノート

このシリーズの概略の目次を用意した。これから書く部分については、変更したり整理し直したりするかもしれないし、ここに挙げた順には書かないかもしれない。今後のおおよそのアウトラインということだ。「プログラマのためのユーザインタフェースデザイン」のオンライン版や、もっと長い書籍版からとられた章があるのがわかると思う。それらの章は、内容を拡張し、アップデートし、再評価してあるが、基本的なアイデアは変わっていない。


(オリジナル: What Makes It Great? (First Draft))

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