プロジェクトAardvark中間レポート

From The Joel on Software Translation Project

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Joel Spolsky / 青木靖 訳
2005年7月7日 木曜


プロジェクトAardvarkは、このブログを読んでいればご存知と思うが、私たちのサマーインターンによる新しい製品だ。私たちの元には4人のインターンがいて(3人は開発、1人はマーケティング)、完全な製品を最初から最後まで作ろうとしている。彼らは今、Aardvarkを正式にアナウンスし、最初のベータ版を公開するところだ。ちょうど半ばにさしかかったこのプロジェクトについて、最新情報をお伝えすることにしよう。


製品のアイデア

技術に弱いおじさんのコンピュータのトラブルを電話で助けてあげようとした経験があれば、相手に直させる過程がどれくらい苦痛か知っていることだろう。

「スタートをクリックして」

「なに?」

「スタート。スタートをクリックするんだ。左下だよ」

「左下にあるのは、C-T-R-Lっていうのだ」

「画面の左下だよ」

「ああ、そうか。クリックした」

「じゃあ、『ファイル名を指定して実行』をクリックして」

「なに?」

「メニューが出てるでしょ。『ファイル名を指定して実行』をクリックして」

「そんなのないよ」

「ないって、どういうこと?」

「ないよ。『ファイル名を指定して実行』なんてない」

「出てるのは何? あるのを読み上げてみて」

「ゴミ箱・・・マイ コンピュータ・・・アンナ・クルニコワ J P G・・・」

「違う違う、メニューだよ」

メニューって何だ?」

「スタートをクリックしたときに出てくるメニューだよ」

「何したときだって?」


これはあなたがあきらめて、自分では10秒で直せることが2時間の悪夢となることを思い知る瞬間だ。その間は家族とも離れ、眠れなくなり、電話回線を塞いでいるためにガス欠で立ち往生しているマージおばさんはおじさんに助けに来てもらうことができず、あなたのことをずっと恨み続けることになるのだ。あなたがプログラマだというだけで、友達や親戚やアパートの隣人たちといった1ダースもの人たちのヘルプデスクをしなきゃならない理由はない。そうだよね?

これが新しいFog Creek CopiotSMサービスの背後にあるアイデアだ。簡単に言うとこういう感じになる。あなたはcopilot.comへ行き、招待コードを手に入れる。あなたはおじさんにcopilot.comに行ってその招待コードを入力するように伝える。あなた方はそれぞれ小さなプログラムをダウンロードして実行する。あなたがプログラムを実行すると、ウィンドウの中におじさんのコンピュータの画面が現れる。あなたがマウスを動かすと、おじさんのコンピュータのマウスカーソルが動き、あなたが何かタイプすると、それはおじさんのコンピュータに現れる。そしてあなたが問題を修正してログオフすれば、平和が戻っておばさんは無事家に帰ることができ、おじさんもあなたの結婚式をボイコットしてホテルの外で不穏なプラカードを掲げたりせずにダンスしてくれるだろう。


でも、でも、でも・・・

確かに似たようなサービスは存在する。しかしそんなことで私が思いとどまったことはない。指摘しておきたいのは、Fog Creekはバグトラッキングソフトウェアのおかげで毎年収入を倍増させてきたが、バグトラッキングソフトというのは私たちが発明したものでも何でもない。Copilotが競合製品より上手くやれることがいくつかあるが、私たちが特に心がけているのは、Fog Creek Copilotのユーザ体験をまったくもってシームレスにするということだ。完全にセキュアで、安価で、簡単であり、どちらの側のファイアウォールも通り抜けることができ、ファイアウォールの裏にいるDSL接続された自宅のママを、職場のNATの裏からすんなりと助けられるようにするのだ。ダウンロードされるプログラムは完備で構成済みであり、用が済めば自動的に削除されるので、安心して使うことができる。何の義務も生じないし、サインアップしたりアカウントを作ってパスワードを覚えておく必要もない。支払いはおじさんの方にしてもらうことだってできる。なんにせよ、利益を得るのはおじさんの方なのだから。

ギークの読者のために言うと、このサービスは高度にカスタマイズされ、最適化されたVNCを使うが、同時に私たちの作っているカスタマイズされた「リフレクター」サービスを必要とし、これはファイアウォールの外に置かれる。あなたのコンピュータをファイアウォールの背後にあるママのコンピュータに直接接続することはできないので、彼女をサーバに接続させ、あなたも同じサーバに接続するというわけだ。そうするとリフレクターが2人の間のデータを中継してくれる。


どうやってこのアイデアを得たか?

この数年、私たちはFogBugzの顧客サポートを、これと同様のやり方でやってきたが、セットアップするのが骨だった。私たちが顧客のコンピュータを操作できるようにするには、顧客に7ステップの手順を実行してもらう必要があり、電話でこの手順を案内するのには平均して5分かかっていた。Fog Creek Copilotサービスを使えば、メールをチェックしてリンクをクリックするように言えば、ほら、彼らのコンピュータを直せるようになる!

だからオリジナルのアイデアはテクニカルサポートで使うというものだった。しかし私がこのアイデアをインターンに話したところ、4人のうちの2人が、「ああ、こんなのがあればママを助けるときに使えたのに」と言ったのだ。これは私たちが非公式のテクニカルサポートという大きな市場があることに気付いた瞬間だ・・・ファイアウォールの問題のためにVNCのようなプログラムを使えないレオおじさんを助けようとしている人はたくさんいるのだ。だから私たちはリリース1の対象を、テクニカルサポート部門から、カジュアルなホームユーザに変更した。


サービスの名前

サービス名に要求される重要な条件がたくさんあったが、もっとも重要だったのは、電話越しにその名前を伝えたとき、正しく伝わる見込みが非常に高いということだ。この基準により、奇妙な綴りや電話で誤って伝わりやすい名前は除外される(たとえば「m」と「n」はほとんど区別不能だ)。異なる綴り方のできる名前も排除される。私たちは「Fixant」(直し屋アリ)という名前の検討にかなりの時間を使ったあと(イーサネットケーブルを持ったアリのクールなイラストまで作った)、みんなを集めて30分ばかりブレーンストーミングしたときに「Copilot」(副操縦士)というアイデアに行き当たった。この言葉を考えついたのが誰だったのか覚えていない。ブレーンストーミングでは、互いにアイデアを言い合って、それが他の人がアイデアを生むのを刺激し、それらをすべてホワイトボードに書き出すのだ。

Copilotという名前の製品は2ダースばかりあって、その多くは登録商標となっている。だから私たちが商標について相談した弁護士は、Fog Creek Copilotという名前にして、他のCopilotブランドの製品と混同される可能性を排除するようにアドバイスした。商標法の要点は、製品の素性について混乱を招いたり、混乱を招く可能性のあるものを許さない、ということで、前に「Fog Creek」をくっつけることによりそれを確かにしようというわけだ。しかし私たちは常にフルネームを使うようにする必要がある。Microsoft Excelや、Microsoft Visual Basic for Applications for Microsoft Excelといった製品で仕事を始めた私は別に気にしないが。Microsoft Excelチームに何週間かいると、「Microsoft」が前についていない「Excel」という語を見たとき、何か裸のような感じがするようになる。

私たちは、FogBugzの最初のバージョンの開発に費やした以上の金を払ってドメイン名を買った。大金ではあるが、本当にいい名前なのだ――綴りも発音も簡単で、製品のすることを示しているため、より記憶に残りやすくなる。


カンファレンス

何かの理由で、ずっとずっと以前に、私はColdFusionのカンファレンスのCFUNITEDでキーノートスピーチをすることを引き受けた。

「だけどColdFusionは使ったことないよ!」頼まれたとき私はそう異議を申し立てたのだが、主催者はこう答えたのだ。「気にしないで、誰も使ってないんだから。カンファレンスの最大のスポンサーはMicrosoftだけど、彼らはColdFusionの開発者をVB.NETに乗り換えさせようと、大々的に参加しているんだ」

偶然にも、カンファレンスはインターンたちの作ったプログラムの最初の機能完成版をお披露目するのに最高のタイミングだった。これはチームに目標となる締め切りを設定することになった。カンファレンスでFog Creekはブースを出展し、インターンたちが立ち寄った数百人の参加者に対してデモをした。

これはFog Creekが参加した初めてのトレードショーだった。正直なことを言うと、トレードショーというのは潜在顧客にリーチするための方法として、あまりコスト効率の良いものではない。旅費、ホテル代、出展料、きれいなパンフレットを作るのにかかる数千ドル、そしてみんな1週間仕事ができなくなるので、見込み客の前に出るための方法としては本当に高くつくのだ。私が自分のWebサイトでアーティクルを書けばその1000倍の人の目に触れさせることができるのを考えればなおさらだ。

でもそれは肝心な点ではない。肝心なのは、顧客と直接対話できるということだ。いろいろな異なる売込み方法を試してみて、それに対して人々がどう反応するか実際に聞くことができる。これはWebサイトや雑誌広告のようなインタラクティブじゃないマーケティング方法では得られないものだ。私はこのことをエリック・シンクの書いたすばらしいアーティクル「Going to a Trade Show」を読んで学んだ。

4人のインターン全員と、FogBugzのデモをするFogBugz開発者のブレット、それに私とで、2台の大きなSUVに乗ってワシントンに行った。私たちのブースはサイエンスフェアの展示のように見えたが、何にせよ私たちにとっては最初の経験だったのだ。この次は、バックに張るポスターを作るつもりだ。そうすればもう少しプロフェッショナルらしく見えるだろう。それからアクリル製のパンフレットディスペンサーを持っていき、三つ折りにしたパンフレットをツチブタ(aardvark)型に並べる代りに、それを使おうと思う。

しかしそんなのは些細なことだ。重要なのは何百という潜在顧客と話ができたということで、しかも、ワォ! 反応はすばらしかった。私たちが得た最高の反応は、「昨日私のチーム全員にこれが1000本ほしかったよ」というものだ。ほとんどすべての人がこの製品に感心し、そしてこれがあったならという経験を持っていた。ごく一部の人が競合会社や競合ソリューションのあることを指摘したが、全体としてとてもポジティブなフィードバックが得られた。さらに重要なのは、2日間に渡って様々な人を相手に繰り返し製品の売込みをしていて、最も効果的な見せ方がわかったということだ。一番いい方法というのは、「VNCはご存じですか?」とはじめることではない。これは相手を無表情にさせるだけだ。一番いいのは、リモートサポートの典型的なシナリオではじめるというものだ。「お母さんが電話してきて、画面が半分灰色になってしまったと言っている。いったい何の話をしているのかあなたには見当も付かない」

Image:Whoops_I_Did_it_Again.gif


ベータ版

私たちは先週の金曜に帰ってきて、すぐにベータ版に取りかかった。サマーインターンたちの目標は、夏の終わりまでに、お金を払う顧客のもとに製品を届ける、ということだ。プログラムが「だいたい」できたところでインターンたちを帰して、正社員が来年の2月までデバッグするような羽目にはしたくなかったので、私たちは非常に密なスケジュールで動いてきた。この後の数週間で、私たちは次のことをするつもりだ:

  • 私たちのWebファームにサービスを配備する.
  • 制御されたプライベートベータテストを開始し、数人の人たちにサービスを試してもらい、実世界でちゃんと機能するか見極める。ヤーロンが今ベータテスタの募集をしているところだ
  • より広範囲なパブリックベータテストを開始する。
  • ラボでユーザビリティテストを行う。ユーザビリティテストツールMoraeを作っているTechSmithの人たちがニューヨークに来て、私たちがユーザビリティテストを実施するのを手伝ってくれる。Moraeを使うと、Webカムだけで完全なユーザビリティラボをセットアップできるのだ。
  • 本格的な品質保証プロセスを始める。

これまでのところ、私たちはまったくスケジュール通りに進めてこれたので、製品の完成にはとても自信を持っている。それまでの間、あなたにできることを挙げておこう:

  • Project Aardvarkのブログで経過を追う
  • ベータテストに応募する。採用されると、Fog Creek Copilotサービスを自分で試すことができる。
  • ニューヨークに住んでいるなら、Project Aardvarkオープンハウスに来てほしい。無料のワインとチーズを用意しているし、インターンにソケットプログラミングについて個人的に質問することもできる。オープンハウスは2005年7月14日木曜日の午後5:30から午後7:00まで、Fog Creek Software(535 8th Ave., 18th Floor, New York)で開催される。


(オリジナル: Project Aardvark Midterm Report)

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