マネジメントの本

From The Joel on Software Translation Project

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Joel Spolsky / 青木靖 訳
2007年6月29日 金曜

私は今2冊のとてもいいマネジメントの本を読んでいる。

1冊目はロバート・タウンゼンドによる有名なUp the Organization(組織に活を入れろ)だ。この本は最初1970年に出版されて広く支持され、その後だんだんと忘れられていったのだが、先月ワイリーが再版した。タウンゼンドは当時レンタカーのAvisを経営していた。1960年代に書かれたマネジメント本というと、秘書や、昼食のマティーニや、高級ゴルフクラブの会員権みたいなものが出てくると思うかもしれない。しかしこの本は今日の基準でも新鮮に感じられる。たとえば合併についてこう書かれている。

いい会社を持っているならコングロマリットに売ったりしないことだ・・・コングロマリットはあなたの社員たちについていろんなことを約束するだろうが・・・あなたの会社が他の買収企業といっしょくたにして均質化装置に通されたなら、すべての熱意といい社員たちは去ってしまうだろう。

Y Combinatorの若者たちに言っておくと、コングロマリットはその後ドードーの道をたどったのだと得意に思わないことだ。「コングロマリット」というのは今日のYahoo、Microsoft、Google(ああ、それにCondé-Nast)を指す古い言い方なのだ。

†Redditを買収した会社

まあそれはいいとして、タウンゼンドはマネジメントコンサルタントについてはこう書いている。

[彼らは]時間を無駄にし、金がかかり、いい社員の士気を下げ気を散らし、そして問題を解決しない。彼らはあなたの時計を借りて今何時なのかを教え、その時計を持ったままいってしまう人たちなのだ。

そんなの決まり文句だって? あのね、この決まり文句はおそらくタウンゼンドが作ったのだ。そしてこれは今でも正しく、本の後の方で出てくるブーズ・アレンへの愚弄は現在でも100%正しい。

さらにいいのは、彼のマーケティング部門に対する蔑視だ。

マーケティングが・・・そのゲームの名前だ。だからヤジ屋にやらせるのではなくリーダーが先に立ってやる方がいい。年に1回か2回、リーダーが10人か20人か30人の主要なスタッフを連れ・・・3、4日どこか人里離れた場所に行く。毎日12時間くらいを使って普段聞けない質問をし、ビジネスについて再考し(我々は何を売っているのか? 誰に? いくらで? どうやって認知させるか? どんな形で?)、4時間はくつろいだり運動したりするのに使い、8時間睡眠を取る。これは重労働だ。しかしマーケティングに良い変化を生み出すのは、入り口に「マーケティング」と書いてある常設の「専門家」部隊ではなく、このようなミーティングなのだ。

まったく、私はこのことを何ヶ月か前に学んでおきたかった。セス・ゴーディンは2年前に基本的に同じことを書いている。

何にしても、これはマネジメントのほんの一部だ。この本全体がこういったすばらしいアドバイスに溢れている(ただし大企業にフォーカスしている)。

もしあなたがもう少し、その、現代的なものを探しているのなら、マイケル・ロップと彼の別なる人格であるランズがちょうどManaging Humans: Biting and Humorous Tales of a Software Engineering Manager(人間のマネジメント——ソフトウェアエンジニアリングマネージャのキツくておかしな話)を出したところだ。この本は彼の素晴しいブログRands in Reposeの文章が元になっている。

ロップはNetscape、Borland、Appleといった企業で仕事をしてきた、絵に描いたようなシリコンバレーのミドルマネージャだ。私がこう言うのを侮辱と取らないでほしい。彼はおそらくシリコンバレーで最高のミドルマネージャだ。彼は切れ者でカリスマがあり、詩人-思索家であり、彼以上のボスというのは想像できない。

彼の本の多くの部分はマネージャの扱い方、大企業における政治、技術的なチームの人たちがいっしょにうまく働けるようにするための人間的側面の話となっている。そして彼は独特のスタイルを持っている。「増分型と完成型」を読めば、そのテイストがどんなものか分ると思う。

その同僚とのメールのやり取りで面白かったのは、私たちの意見が食い違ったのはその問題に対して何かすべきかどうかという点ではなかったことだ。私たちが議論したのは、どれくらいやるべきかということだった。この意見の相違が私に思い起こさせたのは、問題に対する解を考え出そうとするやり方に2つのタイプがあるということだ。増分型と完成型だ。
増分型はリアリストだ。彼らは解くべき問題や出荷すべき製品があるというとき、達成可能なことが何かをよく分っている。どれだけのリソースが使えるか、それぞれの時点における政治状況がどうなっているかをよく把握しており、誰が何を知っているかを知っている。彼らはあらゆる秘密をつかんでいる傾向があり、そのことによって認知されることを望んでいる。
完成型は夢想家だ。彼らは問題をどう解くかについてとてもいい考えを持っていて、それは「正しく解く」ということだ。彼らの教条は「問題を解くのに時間を使うのであれば、それを再び(3ヶ月以内に)解かなければならないようなことにならない仕方で解く」ということだ。以前は組織の中にいる完成型はアーキテクトだけだと思っていたが、これは間違いだった。アーキテクトは会社の中で認知されている唯一の完成型だが、このパーソナリティ自体は至るところに潜んでいるのだ。

最後にもう一冊あげておこう。

私にUp the Organization送ってきた広報担当者が、ベン・カスノカの新刊My Start-Up Life(スタートアップの生活)も一緒に送ってきた。ベンはカリスマ的でエネルギッシュで頭の切れる19歳で、成功したソフトウェア会社Comcateを14歳のときに立ち上げた。まったくもって魅力的だ。いうなればソフトウェアスタートアップのドゥーギー・ハウザーだ。彼はドゥーギー・ハウザーって誰なのか知らないだろうけど。この番組が終わったのは彼が4歳の時だ。4歳といえば、彼は恐らく2番目のIPOの準備で忙しくてテレビなんて見ている暇はなかっただろう。

ベンは実にクールな19歳だ。すごく頭がいい。文章もうまい。

しかし。

しかし、しかし。

彼の本は残念ながら会社を立ち上げることについて何も教えてくれない。実際の会社がやったことや、ものごとがどういう仕組みになっているのかについてはごく簡単にしか書かれていない。さらに悪いのは、かなり恥ずかしくなるような補足欄がたくさん詰め込んであって、ビジネスマネジメントについての幼稚な考えが書かれている。

優れた起業家は立ち上がり、小さなリスクを負い(そして時には大きなリスクを)、分らなくなった時には手を挙げ、どうなっているのか、どうすれば状況を改善できるのかを見極めようとする。
立ち上がって手を挙げた時点で、あなたはおそらく他の9割の人たちの上をいっているのだ。

もうひとつ:

指導の関係においては、受ける側の人はまったく一方通行にならぬよう熱心に努めるべきだ。

ああ、ベン。ベン。

君は頭がいいし、ルックスもいい。実際のところ他のどの19歳よりもソフトウェア会社を立ち上げることについてよく分っている。そして私は喜んで君の次のスタートアップに投資するし、喜んで君を雇うし、なんだったら養子にもしよう。

しかし。注意し聞いて。君が円熟した23歳になった時、この本に書いたことを振り返ってこう言うだろう。「こんなうぬぼれたゴミを出版するのをどうして誰も止めてくれなかったんだ」。そして恥ずかしさで死にたくなるだろう。私は40代だが、それでも自分のサイトに書いた尊大でうぬぼれたゴミに救いがたく恥ずかしい気持ちになることがある。今書いているこの文章を含めて。

この本はパスしていい。


(オリジナル: Management books)

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