Clearの底知れぬ楽天主義

From The Joel on Software Translation Project

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Joel Spolsky / Fujimoto訳
2009年6月26日 火曜

つい先ほど、Clearが事業を停止した。

Clearがやっていたのはこういうビジネスだ。まず、あなたは200ドル払って一年間の会員資格を手に入れる。そして、大がかりで複雑な身元調査を受けて、あなたが絶対確実に信用の置ける人物だということを証明する。

その代わりに、あなたはいくつかの大空港で、TSAのスクリーニングのために並んでいる行列の一番前に入ることができるようになる。

しかし、スクリーニング自体をとばすことはできない。あなたはまだX線検査の装置を通らなければならないし、靴を脱いで、ベルトを外し、ポケットの中身をあらため、ラップトップを取りのけ、洗面道具を詰めたジッパー袋も出さなければならない。

あなたはただ行列の一番前に割って入れるだけなのだ。

ごく少数の人たちは会員となった。いくつかの空港では、最前列に行けるようになることに金を払う価値は実際にあったのだ。

Clearの本当のビジネスプランはこれとは違っていた。当初のプランでは、Clearが綿密な身辺調査を行うことで、(絶対確実に信頼の置ける)旅行客はセキュリティチェックを完全にとばせるようになるはずだった。

だが、TSAはパイロットたちすら信頼していないのだ。現にパイロットも私たちと同じスクリーニングを受け、100mlサイズのシャンプーボトルみたいなとてつもなく危険な物を飛行機に持ちこもうとはしていないと証明しなくてはならないのだ。それというのももちろん、小さなシャンプーのボトルがあればそれで爆弾を作って、操縦している飛行機をビルに突っ込ませることができるかもしれないからね。ジェット機の操縦席に座っているただのパイロットには無理だろうけど。

だから結局、TSAはこんな「スクリーニングをとばす」なんてことには決して首を縦に振らなかったのだ。最終的にClearに許されたことと言えば、列の一番前に割って入るということだけだった。

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この時点で—ここからが興味深いところなのだが—もうこの時点で、まともなビジネスマンならこう言うだろう。「えーと、スクリーニングをとばすことができないなら、Clearのアイデアってもう意味が無いんじゃない?」

オーケー。もしかしたら、最前列に入れるということを売り物にするのは商売になるかもしれないね。ここには何らかのビジネスモデルがあるのかもしれない。

けど、それならなぜClearはまだ身辺調査をやっていたわけ? これにはまったく何の意味もない。

状況が変わり、そしてClearの「事前のスクリーニング」というビジネスモデルは成り立たないということが明らかになった。しかし、Clearはともかくこの事業を続けた。一体どんな組織の機能不全があれば、状況の変化を完全に無視して採算のとれない事業を続けるなんてことになるんだろうか?

さらにおかしいのは、もしClearがビジネスモデルの中の無駄に馬鹿げた一部分を除いてさえいれば、恐らく収益をあげられただろうということだ。つまり、全顧客の詳細な身辺調査というプロセスだ。

Clearの人間は誰一人として何も考えていなかった。彼らにはビジネスモデルがあったが、それは実際には不可能なものだった。これは分かりきっていたことで、しかしそれでもClearはこの商売をやりつづけた。頭の足りない楽天主義。私は彼らに敬意を表すべきなのだろうか、それとも笑ってやるべきなのだろうか。


(オリジナル: The eternal optimism of the Clear mind)

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